スペンサー『科学の起源』

はじめに

 コントと並ぶ実証主義の大物コント『実証精神論』のページ参照)。

 科学主義・実証主義の草創期のスピリットが大いに感じられる一冊だ。 


1.形而上学批判

「オーケンもヘーゲルも、「自然について哲学することは世界創造の大思想を追考することである」という教義を抱いているらしいが、イギリス人の目から見れば、こうしたドグマを疑いのない真理として述べているということはかなり面白い。」

 この皮肉たっぷりの物言いは、なかなかウィットに富んでいる。

 ともかくも絶対者を措定してそこから世界を考えようとする大陸系の哲学を、何をばかげたことを言ってるんだと一蹴する。まったく現実主義者らしい考え方だ。そしてかなり説得力がある。

 そこで彼は、コントの実証主義こそ唯一の考え方だと言うが、しかしコントのように、「諸科学を縦に並べることは間違いである。科学の真なる前後関係は存在しない。」


2.科学の起源

 スペンサーによると、科学の起源はまず「相違」を見分けて分類することから始まった。

 続いて区別の難しい「相等」という概念ができあがる。

 そして重要なことは、これらの概念は人間の主観にそってできたものであって、客観それ自体にそなわった概念ではないということだ。

「つまり、単に研究の助けと考える限りは正しいが、自然のうちの実在の表現と考えてはならぬということである。」

 スペンサーは、このような科学の歴史的発達理論は、教育に重大な影響を及ぼすと言って本書を結ぶ。彼の教育論は、『知識の価値』のページを参照していただきたい。

(苫野一徳)

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