スペンサー『知識の価値—教育論第1部』




はじめに

 最も重要な知識、そして教育においても最も重要な知識は、

 1に科学、2に科学、3にも4にも5にも科学!!

 この過激なまでの科学的知識の重要性の提唱には、なかなか圧巻なものがある。

 教育学に一時代を画した、スペンサーの教育論を以下紹介・解説していこう。


1.知識の相対的価値をみきわめる

「完全に生きるための準備をさせることが教育の果たすべき機能であり、この機能遂行の程度の吟味こそなされなければならない。」

 そこで、知識の相対的価値をみきわめ、何を教育でなすべきかを考えよう。

 これが本書の目的だ。


2.知識の相対的価値

 スペンサーによると、その答えは次のようになる。

 自己保存に直接役立つ活動

  生活必需品の確保により自己保存に間接的に役立つ活動

  子どもを育て鍛えるための活動

  社会的政治的関係を維持するための活動

  趣味と感情の満足に当てるレジャーを満たす種々の活動

 そしてこれは、すべて「科学」教育につながる、とスペンサーは言う。

 最終段階の趣味の段階、とりわけ「芸術」においてすら、その真の価値は「科学」にある。

「あらゆる最高芸術は科学に基づく。彫刻も絵画も、科学的知識を要する。〔中略〕天才が科学と結婚したときにのみ最高の結果は生み出されるのである。科学はすでに詩なのである。」
 
 なんとも激しい「科学」愛だ。

 私の考えでは、確かに合理的推論可能な「科学」というものは、人類の一定の共通了解を可能にするという意味で重要だ。

 しかしコントのページでも書いたように、今日「科学的実証」ですら、観点や関心の違いから、ほんとうにそれが「実証的」であるかをめぐる対立が生まれている(コント『実証精神論』のページ参照)。

 この問題を克服する哲学を打ち立てたのは、わたしの考えではフッサール現象学である。ご興味のある方には、フッサール『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』のページなどをお読みいただきたい。

(苫野一徳)



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