マルサス『人口論』

はじめに

 マルサスの有名な人口法則

 人口は、制限されなければ等比数列的に増大する。他方、生活資料は等差数列的にしか増大しない。

 だからいずれ人口が多くなりすぎて、これを養えるだけの食糧がなくなり大幅な貧困が避けられなくなる。

 それがマルサスの直観だった。

 経済学においては、おそらくマルサスの経済理論は遠い過去のものであるに違いない。

 実際、その後の産業革命によって生活資料を爆発的に増大させることが可能になったため、マルサスの警告は杞憂に終わった。

 しかしそれでも、これからの未来社会を考えるにあたって、マルサスの洞察はある知見をわれわれに与えてくれる。

 環境問題資源問題を抱える今日、膨大な人口を養うだけの生活資料を、われわれはこれからどのようにして得ることができるのだろうか。


1.本書の目的
 
「人口はつねに、生活資料の水準におしとどめられなければならないことは明白だが、この水準が実現される方法は、これまで研究されてこなかった。」

 だからこの方法を研究しよう、というのが本書の目的だ。


2.人口法則

「人口は、制限されなければ、等比数列的に増大する。生活資料は、等差数列的にしか増大しない。」

 人口はどんどんと増えていくのに対して、その人口を養うだけの生活資料は少しずつしか増加しない。マルサスはこの命題を、さまざまなデータをもって実証していく。



3.人口増加の対策

 そこでマルサスは、大胆な対策を講じる。

「人口増加にたいする積極的制限は、すでにはじまっている増加を抑制する制限を意味するが、それはおもに社会のもっとも下層の諸階層にかぎられる。」

 したがってマルサスは、イングランドの諸救貧法を批判する。すなわちこれらは、

 1)食糧を増加させることなく人口を増加させる、2)ワークハウスで消費される食物の量が、さもなければもっと勤勉な成員のものとなったわけまえを減らし、そうしてより多くのものを人に頼らせるようにする、という点で、貧民の一般的状態を押し下げる。

 わけである。



4.財産制度について

「ゴドウィン氏が提唱する平等の制度は美しく魅力があるが、その時は決してこないのである。既存の財産制度がなければ、すべての人間は自分のわずかなたくわえを力で防衛せざるをえないのである。」

 財産を共有しようなどという美しい理想は不可能だ。なぜならわれわれは、限られた蓄えを必死に守ろうとするからだ。だから結局は、人口を抑制し生活資料を上げること、これをおいて人類に未来はない。そうマルサスは主張する。

 以上のようなマルサスの洞察は、大筋としては現代においても通用するものだろう。

 現代、自由と富を享受しているのは、人口のわずか数パーセントにすぎない。

 すべての人が、限られた資源を配分し自由と消費を享受できるようになるには、どう考えても、人口を抑制し生活資料をあげるほかないだろう。

(苫野一徳)



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